Love Eater
「ああ、無情……」
そんな呟きが響くのはお馴染み百夜の研究室の一角。
弾かれた一言は抑揚もなく覇気もない。
なんなら生気すら感じないな。と、【たまたま】居合わせる百夜はクスリと笑って相変わらずの紫煙を揺らすのだ。
最早振り返ってどんな状態であるのか確認するまでもない。
なんならもう1ヶ月近く見続け焼き付いているその姿なのだから。
色々な欲求不満に消耗しきって亡霊化しているソルトの姿は。
今更そんな姿に特別思う事もないのだが、一応突いておいてやろうかという反応を見せるのは百夜のなけなしの優しさでもある。
「ほーんと、飽きもせずよくやるねえ」
まあ、発せられる言葉は決して優しいものではないのだが。
「最初の仲違いからの日数含めれば…早1ヶ月くらいはそうやって死んでるからね?リっ君」
「……好きで死んでるんじゃねえし」
「いやいや、蘇生できる絶好のチャンスはあったじゃない。そこでポカしたのは君でしょうに」
「うぁぁぁぁぁ、言うなぁぁぁぁ」
皆まで言うな。
絶好のチャンスに大失敗をしてしまった事はソルト自身が一番に身に染みているからこそ、こうして悶絶と苦悶の日々に消耗し亡霊化が悪化しているわけで。
それを改めて他人に指摘されると只でさえ落ち込んでいる精神が再起不能にまで崩れ落ちてしまいそうになるのだ。