Love Eater
深夜になっても明かりが完全には落ちぬ都会の街並み。
それをぼんやりと見下ろす姿が高層ビルの屋上にちょこんとあって。
小柄で細身のシルエットはどう見ても少女のものである。
艶やかな漆黒の髪は細首を際立たせるかのように短く切りそろえられており。
華奢な身体はジャージ風のワンピースにすっぽリ包まれている。
小顔に猫目の顔立ちはまだ幼さを漂わせるのに、表情ばかりは実に成熟しきった大人を貼り付け下界を無表情に見下ろしているのだ。
フェンスの外側、何百メートルと高さのあるビルの縁でハイカットのスニーカーの両足をプラプラさせて座りながら。
「やぁぁっぱりっ、てめえだったかっ!!」
そんな怒号と銃声はほぼ同時。
パンッと火薬に弾かれた弾丸はまさにその少女に向かって背後から放たれたもので。
邪魔となるフェンスの狭い網目を難なくすり抜けさせた腕は見事な物。
銃弾は少女を貫き抜き、その衝動によって無情にも少女の身体は地上へと落下した。
普通であるならこうなるべく展開だろう。
実際は、飛んできたボールを避けるが如く、少女がひょいっと小さな動き一つでそれをかわしてしまったのだ。