Love Eater



どうあっても六花が諦めないのであれば大人しく身を任してさっさと終わらせるのが一番で最短の得策。

目を瞑っていれば視覚からの興奮くらいは抑え込める。

あとはもう……無心だ。

無心になるんだ俺。

神父業の中でもそんな熱心な修行僧の様な心持は抱いた事が無い男だというのに。

今この瞬間は必至に己の煩悩と戦い無の極致を極めようと歯を噛みしめるソルトがいるわけだが。

「頭洗いまーす。お痒いとこございませんか~?」

『無心だ、無心……ちょっと気持ちいいな。』

「はーい、次は首でーす」

『無心、無心……あ、そこ押してほしい』

「大きな背中ですね~」

『無心、無心……そこそそこっ!自分じゃ洗いにくいとこなんだよなぁ。』

「ふさふさの尻尾も綺麗にね」

『無心、無心……へえ、尻尾ってこんな感覚か』

「お腹いきまーす」

『無心、むし……んんっ……ちょ…擽った………って、あっ……ああっ、ま、待ったぁぁぁぁ!!!』

「わっ!何々!?暴れちゃダメだって!暴れたら洗えないでしょっ!」

『洗われたくないから暴れとんじゃっ!!アホかぁっ!!』

目をしっかり閉じ無心を心がけて耐えていれば、この時間も然程苦行ではないかもしれない。

過敏に反応する余計な刺激を抜きにすれば、念入りに洗ってもらえる行為はそこそこ気持ちが良いものであるし。

なんて、そんな風に思って油断したのもまさに束の間の事。

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