Love Eater
「もぉぉぉ、そんなに嫌がらなくてもいいじゃんかぁ。怒りんぼさんだなぁ」
『嫌がるわ、ボケェッ!』
「本気で噛むとか酷いなあ」
『アホか、甘噛みだっつーの。この牙で本気で噛んでたらとっくにお花畑の真ん中だっつーの!』
なんやかんやの大騒ぎの後の脱衣所。
首元のくっきりとした噛み痕を摩りながらボヤク六花にソルトはソルトで真っ当な言い分を主張しているのだが相変わらずその声は一方通行で六花の耳には犬の声しか届いてはいない。
とにかく波乱万丈な入浴を程々に終えて、今は互いにタオルドライの真っ最中で自分の身体を拭き終わった六花は新しいフワフワのタオルでソルトの身体を拭き始める。
本来、絶賛狼であるソルトは身体を震わせる程度で充分に水気は飛ぶのであるが、呪い効果や風呂場の騒ぎやら度重なる精神疲労によって動く気力もなく。
完全に逆上せ上がった身体はグッタリと脱衣所の床に伏せきってしまったのだ。
最早、滾った興奮のままに六花を襲おうなんて体力の余力もない。
それはそれでソルトにとってはある意味感情任せの強姦紛いな間違いを犯す心配がないという安堵ではあるものの、未消化な欲求や熱の継続が緩和したわけではない。
結果、死ぬほどしんどい。
死ぬよりしんどい。
そんな感覚に現状出来得るのはハアッハアッと熱い呼吸を漏らす事ばかりなのだ。