Love Eater
気怠い体を突き動かすとのそりとベッドを這って六花の傍へ。
流石に擦り寄ったりはしないが、すぐ真横まで距離を詰めるとストンと伏せて形ばかりに顔だけは背けて。
急に距離を縮めたソルトの姿に最初はキョトンと呆けた六花も、その形ばかりのつれなさにはついついクスリと笑ってしまう。
どこまでもどこまでも想い人の面影を匂わせる大きな獣だと。
そんな愛着のままにそっと手を伸ばすとソルトを抱き寄せながらベッドに寝転んだのだ。
いつもなら『なにしやがる!』と喚き散らかすであろうソルトもさすがにされるがままに身を任せて一息つくのみ。
あんな寂しさを見せつけられてどうしてその手を振り払えようか。
「……君にも名前を付けてあげないとね」
『そんなものいらねえよ』
「……僕はね、六花って言うんだ。六つの花って書いて六花」
『知ってるよ』
「良い名前でしょ?僕の自慢で、ここにあるどんな物より価値がある宝物」
『………』
「ソルトが僕にくれたたった一つの宝物なんだ」
『………』
「だけど僕はソルトの本当の名前なんて知らない」
『………』
「……僕に名前をくれた癖に、自分の名前も教えてくれないんだもんな」
『………』
語られる六花の名前に関する昔話はソルトの記憶にも鮮明に残っている。
勝手に脳内で再生されるほどに色濃く焼き付いている記憶なのだ。