Love Eater
ソルトの頭の中、記憶の再生の中見つめ上げてくる六花はまだあどけない幼少期の姿。
場所はどこかの裏路地。
乱れた黒髪に汚れた手足に顔、清潔とは言えない衣服、生気のない水色のガラス玉の様な目。
10年程前の記憶だ。
明らかに親の管轄下で生活保護を受けているようには見えない魔女の危険因子を持った六花を見つけたのは当時まだ【神父】見習いであったソルト。
名前すら持ち合わせていなかった六花に名を与えたのはソルトなのだ。
自分と同じ書き名を与えたのは思いつきの気まぐれ。
まさか、その時の子供が魔女のまま成長し自分の前に現れるなんて10年前のその時は思いもしなかったのだ。
こんな風に自分が想われ、自分も想いを馳せるような関係になるなんて。
「……良い名前……考えてあげるからね」
『………』
気が付けば記憶の回想に入り込んでいたソルトの意識を引き戻したのは六花の声音。
それでも振り返り捉えた六花は微睡んだ目で欠伸を零し、すでに意識はうつらうつらと夢の世界に引き込まれいるらしい。
ものの1分程だ。
六花の意識が完全に落ちて小さな寝息をたてはじめたのは。
しばらくすればソルトの身体をがっちり抱き寄せていた腕の力も緩み、ヤレヤレと息を吐きながら体を起こして布団を手繰り寄せるのだ。