Love Eater




ソルトがその理由と結論にたどり着いたのは目覚めて早々となるのだが……。

うわ……、なんかむせかえる程に甘ぇ……。

真っ先に覚醒したのは嗅覚からで、鼻を刺激する誘惑的な匂いには思考より早く視覚が覚醒し始める。

はっきりとは物を映さぬ双眸を瞬かせ、ついでに大あくびを零していればようやく思考も働き始めて。

えっと……なんだっけ?

どうしてたっけ?

なんでこんな異様に甘ったるい匂いするんだっけ?

えっと…えっと…あー……確か呪いだよ。

呪いで…………。

……………。

「………あれっ?」

流石に気が付いた自分の異変にはぼやけていた視界もクリアになる。

同時に覚醒しきった聴覚にも自分の間の抜けた声がはっきりと響いたのだ。

そして、あんなに自分を蝕んでいた倦怠感の不在に自分の肌に直に伝わる他の体温。

そんな条件が揃ってしまえば答えは考える間でもなく一つであるのだ。

「とけ……てる?」

興奮状態も然り、もう一つ言えば狼になっていた体の方も。

確めるように持ち上げた手は真っ当な人の腕であるし毛皮もない。

体調も改善、無事人間化。

ソルトにとってはこの上ない最高の瞬間である筈であるのに、同時にぶち当たる問題にはヒクついた苦笑しか浮かばない。

そうして恐る恐るゆっくり自分の腕の中を確めれば当然すやすやと寝息を立てる六花が収まっているのだ。

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