Love Eater
それでも、捉えた六花の視線はこちらに向かずの後ろ姿のまま。
確かに自分の名前を呼んだよな?と小首を傾げた瞬間にも再び六花は『りっか』とソルトの名前を呼んでいるのだ。
「おい、なあ、」
「あれ?まだ居たの?」
さりげなく傷つく一言をぉぉぉ。
「っ……いやさ、お前さっきから誰を呼んでんだ?【りっか】って」
「ああ、私の可愛いワンちゃんの名前」
「っ!!!!?」
「数日前にねえ、この裏路地で運命的に出会って拾ったんだけどいなくなっちゃったんだよねえ」
「へ……へえ……。で……その……拾った犬の名前が…何?」
「六花りっか。私と同じ字で【りっか】って読むの。良いでしょ」
「…………ステキデスネ」
俺の本名なんですが。
とは言えるはずもなく。
見えない血を口から垂れ流しながらソルトはなんとかその一言を弾いたのだ。
「ちょっと怒りんぼで捻くれ者だけど毛並みが良い可愛いワンちゃんなんだけどなぁ」
「へえ……」
「なんか発情期みたいだったからどっか可愛い雌犬でも探しに行っちゃったのかな~、ううっ、りっかぁ」
「ま、まあ気が済んだら戻ってくんじゃね?」
「戻ってきたら去勢しちゃわなきゃかなぁ」
「っ……」
思わずソルトが自分の股間を押さえたのは言うまでもなく。
次に狼になっても絶対に六花の前にだけは姿を見せちゃならねえと誓った瞬間でもある。