Love Eater
その脳裏の再現だけでも充分に鬱陶しいというのに、振り返りその姿を視覚で捉えればとうとう口から溜め息まで漏れてしまうのだ。
「迂闊に私情を話し込むもんじゃねえな。嫌な奴に話しを聞かれた」
「ご挨拶だなぁ。俺とリッカの仲でしょうが」
「どんな仲だよ」
「ん~?万年不誠実同盟の?」
「どんな同盟だよ!?名誉棄損で訴えるぞ!?」
「クックッ、名誉棄損とかよく言うねえ。欲に任せて適当に女を食い捨てする悪い王子様な癖に」
「お前と一緒にすんな。言っとくけど俺が手出すときは同意の上での相手だけだからな」
「で?そんなリッカが手も出せず自主お預けしてる魔女っ娘ってどんな子よ?」
「お前いつから話聞いてたんだよ?」
「多分、リッカが俺に聞かれて都合が悪いと思ってる内容は全部かな」
ああ、本当に、迂闊に私情を語るべきじゃない。
そう思っても後の祭りで、どう足掻こうが厄介な男に悩みを知られてしまった事実は変わらない。
恨みがましく睨み上げてみても返されるのは半開きの垂れ目がやる気なく微笑む憎たらしい表情ばかり。
何もかもが鬱陶しい。
光が透かすと赤く光る黒髪も、やる気がないのにどこか妖しく浮かぶ笑みも。
華奢とまで行かずとも細い骨格に白い肌。
垂れ目の顔の造りはソルトとは異なる精巧なものであるのに、その整った姿にぶら下がる無機質な物の多い事と言ったら。