Love Eater



どういう心境でどんな表情の今であるのか。

沈黙が続く程伺い知れない六花の反応に心臓が嫌な音を響かせる。

いや、どんな反応をされてもこれは必要な痛みであるのだと理解はしているのだ。

理解はしているけれど…。

この重苦しい沈黙の間に普通の感覚の人間であらば、居たたまれないと気の一つでも遣ってしまってもおかしくない。

なのに、蓮華とくれば実に愉快な修羅場の出来上がりだと、何かの映画を鑑賞しているが如く嬉々として傍観し、ツラリと笑ってまでみせるのだ。

六花の沈黙もソルトの動揺も蓮華には面白おかしい喜劇の一面にしかすぎず、次はどんな展開になるのかと嬉々として流れを見守っていた刹那。

動きを見せたのは六花の方で、相変わらず言葉を発する事はなく次の瞬間にはどこからともなく現れた箒をその手に握っているのだ。

そのまま流れる所作で箒に跨る姿には流石にソルトも反応せずにはいられず、今にも飛び立ってしまいそうな姿を引き止めるように「六花」と名前を呼んでしまった。

そんな呼びかけにはようやく六花の視線がソルトへと注がれる事となったのだが。

「っ……」

「……何?」

「いや……」

六花に見つめられる事をこれほど畏怖したのは初めての事だろう。

いつもは澄んで綺麗だと感じていた水色の双眸が、今は澄み渡りすぎて鋭利な冷たさを感じる。

いつも確かに感じていた好意のきらめきなんか夢幻であったかのように微塵も感じられない。

そんな反応に返せる言葉もなく押し黙ってしまえば、さらりと無興味に視線まで外されるのだ。

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