Love Eater
そんな折に
「ああ、忘れてた」
なんて響く六花の一言に期待をかけたのも一瞬の事。
次の瞬間には強奪された筈の自分のパンツがその手に投げ返されているのだ。
「それ、もう要らないや」
「っ…てめえが勝手に盗っ…」
「うん、ごめんね。今までのも」
「何を急にしおらしく…」
「【神父様】、」
「っ……」
「……さようなら」
「なっ……六__」
名前を言い切るより早く、トンッと地面を蹴った六花の姿はあっという間に空高く舞い上がって飛び去っていて。
どんなにソルトが視線で追い続けようが最後の瞬間まで振り返ることはなく。
結果、ソルトの脳裏には喜楽どころか悲痛の情すら揺らさない自分に無興味である六花の姿が上書きされて終わってしまったのだ。
こんな状況は想定内であって、想定外でもあって。
少なからず六花の反感を買う事は理解していたし覚悟もしていた。
それでも、この実際訪れた状況はソルトが想定していたものを上回るものになっていて。
六花の自分への反応は反感を通り越した先の冷徹だと、嫌でも現実として圧し掛かってくる。
一時の痛みのつもりで発したソルトの結論に、六花が下した答えがあの無感情な反応なのだ。
悲痛に打ちひしがれて泣くような執着すらない。
ソルトと呼ぶこともなく、敢えて【神父様】なんて一線を引いて。
そして、『またね』なんて次を期待させる一言ではなく『さようなら』なんていう決別を思わせる別れの言葉。