ヴァーミリオンの空の下
 それは真帆に近付くための言葉。

 急に黙り込む真帆。

そんな降り立つ沈黙に、僕は畏怖を感じる。

真帆の存在を確認するみたいに、少しだけ腕に力を込める。

すると、その細いウエストが内側から返事をした。

「心配するなよ」

 長い下り坂が終わりをむかえて家が見えてくる。

ブレーキをゆっくり掛けて自転車は動きを止める。

振り向いた真帆はまぶしいほどの笑顔だった。

「晴海がどんなふうになっても私は許すよ」

「昔から真帆のためになることをしようとして、結局受験の時しか役にたってないんだよ?」

「そうだなぁ」

 目を閉じた真帆の顔は夕日の中でもわかるほど、みるみるうちに朱に染まる。
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