ヴァーミリオンの空の下
「私の近くにいてくれるだけでいいんだよ」

 不意な答えに戸惑った。

気付けば自転車は再度前進し始めて、残りの短い距離を縮めていく。

「ねぇ真帆。それってさ――」

「あーうるさいうるさい!」

 加速する。

 風の音が鳴り響く。

 耳まで朱くなった真帆。

 何も言うまいと、そっとその背中に身を任せた。

「本当になにかをして欲しい時にそばにいてくれたからな」

 忘れ物をした真帆の代わりに、自ら家までの道を走ったことがあった。

 一人寂しく家で留守番をしていた真帆に何度も付き添った。

 真帆が風邪で寝込んだ時にお見舞いに行った。

そのまま看病して風邪をうつされたこともあった。

 憧れてた中学の先輩に彼女がいることを知った時、落ち込んだ真帆を精一杯励ました。

 高校に入っても勉強を教え続けた。
< 7 / 9 >

この作品をシェア

pagetop