part-time lover
「お待たせ」
「おかえりー」
まだ少し髪が湿った彼を迎え入れる頃には、荒れた呼吸も赤くなった目も一旦落ち着いていたけど、心中は穏やかでなかった。
いつもなら部屋着の彼も可愛いななんて思ってるのに。
「ちょっと眠そう?目が重たそうだけど」
さすがするどい。内心少しドキッとしつつもバレたらダメだと思い、平静を装った。
「ちょっと眠くなってきたかも。私もお風呂入ろうかな」
「どうぞどうぞ。部屋着出すね」
少しシワの寄った男物のTシャツとスウェットパンツを渡されてお風呂場に向かった。
急いで服を脱いでシャワーを流した瞬間、無理やり止めた涙が再度溢れ出す。
雅也くんのことだけ考えていればいいはずなのに、なんでケイさんはこんなにも私の心をかき乱すんだろう。
無理やりシャワーで涙を洗い流したけど、胸は相変わらずヒリヒリして痛かった。
あまりにシャワータイムが長くなるのも不自然と思い、いつも通り体を流し終え、ドライヤーの冷風で熱った顔の熱を冷ました。
一度頭の中から無理やりケイさんを消し去って、雅也くんにだけ集中するように意識してからバスルームを出た。
「おかえり。すっきりした?」
「うん、ありがとう」
再びソファーに腰掛け彼の肩にもたれかかったものの、テレビの内容はまったくもって頭に入ってこなかった。
それどころか彼の体温ですら今は落ち着かないんだから、メール1通でここまで取り乱してしまうくらい自分の中でケイさんの存在が大きかったことに今更気づく。
「いい時間だしそろそろ寝る?」
眠そうに目を擦りながら雅也くんが潤んだ声で呟いた。
「うん、そうする」
こういう時は一度寝て頭をリセットするのが一番だろう。
目が重たいのを眠気のせいにして早々に歯磨きを済ませてベッドに潜り込んだ。