part-time lover



『お返事が遅くなってすみません。
というか、しばらくご連絡できていなくてすみませんでした。
お察しの通り、彼氏ができました。
体の関係は無しにして、一緒にお酒を飲んでいただけるのであればぜひ私もまたお会いしたいです』

雅也くんと別れて家に帰る電車の中、タッチパネルを何度も触っては手を止めて、文字を消してを繰り返しながらやっとメールを返すことができた。

伝えたいことはたくさんあるけど、それは文字より直接伝えたほうがいいだろうと思ったら、えらくシンプルな文章になってしまったけど、まあいいだろう。

日曜だしきっと今日は返事も来ないだろうと分かってはいるものの、何度もメールの着信を確認するためディスプレイを見てしまう自分がいた。

結局連絡はなく、落ち着かない気持ちのまま連日浅い眠りで朝を迎えることになってしまった。


『お返事ありがとう。
それとやっぱりそうだったんだね。改めておめでとう。
もしあずさちゃんがよければ、次の金曜はどうかな。仕事もそこまで遅くならないと思うんだけど』

いつもよりもさらにブルーな気持ちで迎えた月曜日、昼休みにメールの着信を確認して、やっと私の気持ちは軽くなった。

周りに人がいなければきっと「よかったー」と声に出ていたことだろう。

『金曜日、大丈夫です。
お時間もケイさんのご都合が良いタイミングで調整してください』

ちょうど今週末は雅也くんに予定がありデートの約束ができなかったので好都合だった。

何を話そうか、どんな顔を向ければいいのか、週末までに考えることは山ほどありそうだけど、会いたい人に会えると思うだけで驚くほど私の心は落ち着いていた。

休憩時間終了のタイミングで送信ボタンを押し、気合を入れて仕事に戻った。


< 106 / 163 >

この作品をシェア

pagetop