part-time lover


「私もずっと年上がタイプと思ってたんですけど、意外と同い年も話題は合うし悪くないなって。
勢いに流された感じもあるけど、波長も合うので付き合うことにしました」

「透子ちゃんの方が年上みたいな口ぶりだね」

私の発言をおかしそうに聞きながら、指摘をされた。
生意気な発言をしたことに気付いたからか、彼の声で自分の名前を呼ばれたからかはわからないけど、思わず顔が熱くなった。

「すいません。無意識に口を開くと可愛くないこと言っちゃうんです」

「いやいや、実際俺も透子ちゃんと同い年だったら幼稚な男だなって思われるんだろうなって思ったよ。20代前半の時は今よりもひどい飲み方してたしなー。いや、恐縮してこんな風に飲めなかったかも」

自虐しながら皮肉を言うところが自分に似ていると思った。
今まであまり見たことがない陽さんの一面。
声を出して笑ってしまった。




「その頃の陽さんも見てみたかったです。
陽さんの奥さんはどんな方なんですか?学生時代からのお付き合いなんですよね」

その質問にうーんと唸ったあと、先ほどのようにまた眉を下げて困った顔をしてから口を開いた。

「そうだね。大学2年生からずっと付き合ってる。
強いて言えばおとなしいタイプの人かな。
あんまり自分のことは話さないから、これだけ長いこと一緒にいても十分に彼女のことは理解できてないのかもしれない。
彼女の方は自分がはじめての彼氏だったから、付き合い方もなんだかぎこちなかったなあ。
卒業のタイミングでもう子供がいることがわかってたから、一般的な社会人の経験もないし。家庭に尽くしてくれるのは苦じゃないみたいだけど、ちょっと申し訳ないことしたなって気持ちが常に自分の中にあるんだよね」

申し訳なさから一緒にいるのだとしたら、奥さんが少し不憫に思えた。
私の立場からは口が裂けても言えないけど。

「それでも、奥さんのこと好きなんですよね」

少しでもポジティブな言葉を聞きたくて、それを促すような質問をした。

「そうだね。女性というよりかは家族として好きって気持ちが強いけど。
何より娘が可愛いから結婚してよかったなとは思ってる」

「子はかすがいってやつですね…」

「そうそう、難しい言葉知ってるね」

おかしそうに笑う彼は残酷なんだろうか、それとも結婚とはそういうもんなんだろうか。

ますます結婚から自分が遠ざかる気がした。


< 111 / 163 >

この作品をシェア

pagetop