part-time lover
「は〜」
家に帰るやいなや、ため息をつきながらソファにうなだれた。
陽さんといた数時間を思い出して、満たされた気持ちとときめきに浸っていることを認めざるをえず途方に暮れる。
「既婚者に本気になるとかありえない」
自分に言い聞かせるように思わず独り言がこぼれた。
それでも理由をつけて陽さんとまだ関わりたいから、お礼をするためにポケットからケータイを取り出して、フリーメールのアプリを開いた。
『今日はありがとうございました!
改めてご飯食べながらお話できて楽しかったです。
コンタクトなのも新鮮でした、いつもより若くみえますね。笑
色々話をして頭の中の整理ができて、まだ少し甘えさせてもらいたいなって思っちゃいました。
次は音信不通にならないので、またお時間あるときにでも連絡もらえたら嬉しいです!
今週もお疲れ様でした。ゆっくり休んでくださいね』
まだ軽く酔っているのと面と向かって話すわけではないこともあって、少し隙を見せるような文章を送ってしまった。
正直になるのは話すのよりも文章の方が得意なのは昔からだ。
このまま眠りにつきたいところだけど、気持ちをリセットするためにシャワーを浴びよう。
明日明後日の予定のない週末の過ごし方は、明日起きてから決めればいいや。
「よし」
一言呟き気合を入れて浴室へと向かった。