part-time lover
「あ…おはよう」
掠れた声でそう呟くと、腕の中に引き寄せられた。
「おはようございます」
何故かすごく満たされたような気分になる。
それと同時に、目覚めて1番のおはようの挨拶に、不思議な心地がした。
「早起きだね。あれ、今何時だろう」
彼が枕元のケータイの時計を確認する。
「何時でした?」
「9時半。もう少し寝る?」
普段の休みなら二度寝してもいい時間だけど、いつもならいるはずのない人が隣にいたらすっかり目が冴えてしまった。
「いや、二度寝できそうになさそうです」
「確かに、それは俺も同じかも。
起きようか」
ゆっくりと腕を解かれて顔を見合わせてから、ニコッと微笑まれた後に軽くキスをされた。
朝がくればいつも通りに戻るかと思ったけど、甘い空気は引き続き流れていてこの後どうしていいかわからなくなる。
「シャワー浴びてきてもいいですか」
「うん、いってらっしゃい」
まだ退室までには時間があったはずだ。
気持ちを切り替えるために、体を起こし床に落ちたバスタオルを拾って浴室へと向かった。
体を起こすと、昨日のアルコールが残っていることを実感する。
そして洗面台の前の鏡に映った自分を見ると、寝癖だらけの浮腫んだ顔でひどい状態で笑ってしまった。
甘い余韻は引きずっても、鏡は現実を見せてくれるらしい。
こんなことになるとは思わず化粧道具はろくに持ってないけど、できる限りの抵抗はした方が良さそうだ。