part-time lover
「ケイさんは奥さんとセックスしないの?」
ベッドサイドに置いたビールを口に含みながら彼に尋ねた。
一度体を重ねたあとは無駄に心を開いて図々しくもプライベートな話を質問してしまうというのが私らしい。
今日はそこそこにお酒も回っているから尚更。
「しなくはないけど、頻度は低いかな。
一人でしたほうが早いしって思っちゃって」
素性もろくに知らない女の方が何も考えずにできるのかという点で謎のシンパシーが生まれた。
「わかります。私もフリーではあるけど、彼氏とのセックスって大変だなと思ってた時ありますよ」
それを聞いて彼がおかしそうに返した。
「あずさちゃんて結構サバサバしてるよね。そういうところ大人びてるというか達観してるというか。
社会に出てさらにスレないか心配だけど」
「ご心配ありがとうございます。お父さんみたいですね」
もうとっくにスレてる気がするけど、と心の中で付け足した。
「俺も同世代よりだいぶ早く結婚して子供も生まれたから、どうしても年下の子と話すと父親みたいな口ぶりになっちゃうんだよねー。気になったら言ってね」
「いや、わりとその方が居心地いいかも」
軽く笑いを含んでキスをした。
自分でも驚くほど相手に心を開いている自分がいることに気づいた。
既婚者なら本気になることもないとセーブがきくのも大きな理由の1つかもしれない。
「ありがと。あずさちゃん、シャワーは?」
「今日もお家であびるので大丈夫です。行ってきてください」
「はーい。ゆっくりしてて」
彼の男らしい背中をベッドの中からぼんやり見送った。