part-time lover
道玄坂上のカフェバーで一杯引っ掛けて、少しだけ酔いを感じながらいつもの場所で彼を待つ。
気づいたら会う前の緊張はもうなくなっていた。
かれこれもう半年以上の付き合いか。
他愛ない話とセックスするだけの関係。いつでも切ろうと思えば切れる関係なのに、何だかんだ続いていることが不思議だった。
まあ、深い思い入れなどがない距離感が心地いいというのはお互い同じなんだろう。
時計の針は21時半を指していた。
またいつものように横断歩道を眺めていると、点滅した信号を見て小走りになる彼を見つけた。
Tシャツにパーカー。今日はカジュアルモードらしい。
「おまたせ。急に呼び出してごめんね」
少し息を荒げて彼がそう言った。
時間通りなんだから謝らなくてもいいのに、そういうところが憎めないところだなと思ったら顔がほころんでしまった。
「いえ、むしろ暇な金曜にお声がけありがとうございました」
「いいタイミングでよかった。就職祝いで今日はお店で飲まない?」
珍しい提案に驚いたが、改めてそういうのも新鮮で悪くないな。
「いいですね」
「たまにはいいビールでも飲もうか」
そう言い終わると彼が坂を下った。