part-time lover
脇道に折れてホテル街を進むと、有名なクラフトビールのバーにたどり着いた。
金曜の夜ということで、外人の客がすでにたくさん入っていた。
飛び交う英語に自分がどこにいるのか一瞬わからなくなる。
カウンターの後ろの大きな黒板には、20種類近くのビールの名前。
これだけあると迷ってしまう。というか名前を見ただけでは味が想像できなくて困ってしまう。
「たくさん種類がありすぎて決められないです」
情報量が多すぎて思考が止まってしまったのが顔に出ていたんだろう。
彼が横目に私を見て笑った。
「じゃあ俺があずさちゃんのぶんも選んでいい?」
「お願いします」
思わず安堵のため息が出そうだった。
「じゃあ先に席とっておいて」
「わかりました」
こういう風にさりげなくリードしてくれるところ、大人だなあとしみじみ思った。
人に甘えるのは苦手な方だけど、こういう関係ならあまり気を遣い過ぎなくて済むのが楽だった。