part-time lover
「おまたせ。どうぞ」
目の前に置かれたのは可愛いピンク色をしたビール。
「口に合うかわからないけど、女の子が好きそうなの選んでみた。ベリー系のサワービール」
「ありがとうございます。ビールなのにサワーですか、初めて飲みます」
「お口に合うといいんだけど。とりあえず乾杯」
グラスをぶつけたあとに、口元に近づける。
さわやかなクランベリーの香りが心地よかった。
一口含むと、想像以上の酸味に驚く。
「おいしい。これ本当にビールですか?
大人の飲み物ですね」
食前酒に良さそうな爽やかさだった。
「ね、ビールって言ってもスタイルによって全然違うでしょ。
俺のも飲む?」
彼が真っ黒なビールの入ったグラスを手渡してくれたので、一口含んだ。
香ばしい香りが口の中に広がる。
「黒ビールってあんまり得意じゃないと思ってたけどおいしい。コーヒーみたい」
予想以上にいいリアクションだったのか、彼が嬉しそうに微笑んだ。
「これで9パーセント近くあるから怖いよね。あ、あずさちゃんの方は度数高くないから安心して」
律儀に弁解してくれる彼を見て思わず笑いがこぼれた。
「ケイさんのこと酔わせて持ち帰ろうとするタイプの男性とは思ってないからむしろ安心してください」
こういう人の良さと品の良さが垣間見えるところが好きだなあと、改めて感じた。