part-time lover
窓の外を眺めると、若い女性と中年の男性がホテルに入っていった。
彼も同様にぼんやり外を見ている。
「俺たちも歩いてる時ってあんな感じなのかな」
そう問われたけど、正直何かが違う気がした。
「んー、最初はそうだったかもしれないけど、今は違うんじゃないですかね。
こんな風にお酒飲んだり、お会いしてくうちにお友達の感覚が強くなってる気がするから。
周りから見ても不自然さが無いんじゃないかな」
9パーセントのビールを一口飲んで酔いが回ったんだろうか。
距離感を保たなければいけない間柄なのに、なぜか自ら近づいているような発言をしていることに気づいたのは話を終えて息を吸った瞬間だった。
「すごいなー、あずさちゃんは。
そういうことさらっと言えるの、俺も見習いたい。
ここの関係性に関してもそうだけど、客観視するのが得意だよね」
後悔をする間も与えない切り返しにむしろこちらが感動した。
「いや、すごいのはケイさんですよ。
さらっと恥ずかしいこと言っちゃったかなと思ってたのに、綺麗に回収してくれるんですもん」
こういう会話のやりとりでも、相性ってあるよなと思う。
自分が心を開く術を無意識に彼はしてのける。
それが居心地の良さでもあるし、危険なところでもある。
割り切れはしているものの、彼に対して変な感情を抱きそうになるのは薄々感じているところだった。