part-time lover
「最近思ってたのは、あずさちゃんが社会人になったら金銭の関係なしで会ってもらえないかなって。
ビジネスの関係というよりかは、友達みたいな感覚で会ってる気持ちの方が強いなって俺も薄々感じてて。
なんかお金のやりとりで解決することに少し虚しい気持ちがしてたんだよね。
それならこんな風に外で美味しいお酒とか、ごはんとか楽しめる関係になりたいなって思ってたんだけど、あずさちゃんはどう思うかな」
さらにスマートに距離をつめられてドキッとした。
それに、自分も同じことを考えたことはこれまでにもあった。
楽しく過ごした時間の対価が金額で数値化されてしまうのは虚しいなと。
それなら見返りなんていらないから、ちゃんと人として、友達として会えたらいいなと。
けどそんなことを言ってしまったら、困らせるだけかと思ってたのに。
「正直びっくりしてます。私も同じようなこと思ってたから。
けど、そういう風に言っていただけて嬉しいです。そのご提案、賛成」
私の言葉を聞いて彼の固い表情が一気に緩むのがわかった。
私が快諾した今、新しい関係が始まったのかと思ったら不思議な気持ちがした。
ビジネスの関係から、何に変わったのだろう。
今の2人の間柄を定義する言葉は私の辞書にはなさそうだ。
「よかった、こちらこそありがとう」
何に乾杯なのかはわからないけど、彼がグラスを傾けてきたので再度私のグラスをぶつけてみた。
少しだけ残っていたビールを一気に飲み干してみる。
今の気持ちを表すように改めて飲んだビールの酸味が先ほどより爽やかに感じた。