part-time lover
いつもと違って、ろくに酔ってもいないのに部屋に入った途端どちらともなく唇を重ねた。
お互いの熱を確かめるように、キスが深くなるにつれ思考が止まっていくのを感じる。
息苦しくなって唇を離すと、体を引き寄せぎゅっと抱きしめられてさらに胸が苦しくなった。
相手に対する感情は恋愛感情じゃないんだろうけど、好意を持った人から求められるのが新鮮で、この気持ちをどんな言葉で表せばいいのかわからない。
そんなこと考えなくてもいいんだよ、とでも言ってくれるかのように彼は体を離すと私の手を取ってベッドの方に足を運んだ。
優しくベッドに横たえられると、彼が上から私の目を覗き込んできた。
そんなことをされたら、心が見透かされそうで思わず視線を横にやると首筋に熱い息がかかるのを感じた。
このうるさい鼓動も彼に全部伝わってるんだろうか。
こっちばかり余裕がないのが悔しくなる。
「そんな風に睨まないで、何も考えずに気持ちよくなってよ」
そんなことを考えながら横目で彼を見たら、思いもよらないことを言われて思わずふっと笑ってしまった。
「睨んでるように見えました?ごめんなさい。
わかりました、素直にケイさんを感じます」
「なにそれ可愛い」
彼が笑いを含みながらもう一度深いキスをした。