part-time lover
2人でビール片手にうつ伏せになり、プルタブを引くと、プシュッと耳障りのいい音がする。
「あずきちゃんは彼氏とか欲しいと思わないの?」
缶をぶつけて一口飲み終わったところで、彼が口を開いた。
いきなりダイレクトな質問。
少し考えたけど、感じるままに話すことにした。
「うーん、今は特別ほしいとか思わないかなあ。遊びたい気持ちも結婚願望もそこまでないから、今はケイさんに相手してもらってるこの感じがちょうどいい気がします。
まあ、いいなって思う人がいれば付き合おうとはなると思うんですけど。
職場恋愛とかにもあんまり興味ないし、出会いとかもないですしねー」
「入職一週間でそこまで言うって相当周りからクールな人にみられてるんだろうね、あずさちゃん」
そう言って笑われると、あまりにも素直に話しすぎていたことに気づいてハッとした。
だめだだめだ、私はあくまでも新社会人なんだった。
「もともとあんまり男性に期待したりとかしないタイプなんで」
彼から目を逸らして当たり障りない返しをしたけど、うまくカムフラージュできたんだろうか。
とはいうものの、本当の私がどんな人だってこの人は気にしないのだろう。
私と同様どこの誰か知らないあずさちゃんと過ごす時間が心地いいんだから。