part-time lover


「本当、達観してるよなー。
自分も割と早々に結婚したからあんまり恋愛に夢見たりはしてない方だけど、その年の時は周りの友達が彼女の話したり遊んでる話聞いて羨ましく思ってたけど」

無い物ねだりだと思った。
自由の時間はいくらでもあるけど、ふとした瞬間に感じる1人の寂しさや不安は、この人にはわからないんだろう。

これだけ満たされたと思っても、誰もいない部屋に帰った時の虚しさはいつまでたっても慣れなかった。

「気楽は気楽ですね。
選択肢が色々あるのも、自分のために使えるものがたくさんあるのも。
先のことを考えると不安になる時もありますけどね」

それを聞いてからビールを一口含んで、彼が少し苦い顔をした。

「今日、あんなこと言ったけど、もし俺があずさちゃんの不安を煽る材料になってるときはちゃんと言ってね。
あずさちゃんの将来の邪魔はしたくないし。
その分、少し年上の立場から何か聞ける話とか、言えるアドバイスがあればするから。
何気ない話でも、ちょっと他の人には話しづらいことでも話してよ」


真剣な目でそう言われたら、はいと言うしかなかった。
責任感は全くないんだろうけど、私という人間に向けてそんな優しい言葉を言ってくれる彼のことを、知り合って一番素敵だなと思っている自分がいた。

「なんか、ありがとうございます。
やっぱりケイさん、親以上にお父さんみたい」

「あ、ごめん。説教くさかった?」

そう言って慌てる彼を見て思わず笑ってしまう。
さっきまで頼もしいと思っていたのに、すぐ可愛いと思わせるところが彼の魅力なのかもしれない。


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