part-time lover
第4話
夏が待ち遠しくなる梅雨明け間近、7月頭の土曜の夕方。
今日は渋谷ではなく、恵比寿で待ち合わせをしていた。
雨で湿度を帯びた空気が全身にまとわりつく気だるさも気にしないほど、珍しく緊張をしている。
というのも、友達の紹介という名目で今から初対面の男性に会うから。
大学時代親しかった友達の会社の同僚。
大手の銀行マンで、誰もが名前を知っている大学出身だそうだ。
肩書きで人を選ぶわけじゃないけど、銀行で働いてる人の話を聞くのは今後ケイさんとの関係が深くなった時の話題に困らないかな、なんて邪な気持ちがあったので、しぶしぶ約束を取り付けてしまったのだった。
実際、銀行の事務員でもなんでもないのに、友達からの話とネットの情報だけで窓口のお姉さんになりきるのは限度があるとうすうす気づいてはいた。
もちろん、会ってみて波長が合えば今日会う彼とのその後の展開だって考えてもいいけど。
月一の既婚者との密会で心がそこそこ満たされている今、自分でも怖いくらい恋愛に対して焦りがなかった。