part-time lover


「全然下手だけどね。
けど、いつも一緒にクラブ行く友達って限られてるから新鮮で嬉しいなー。
透子ちゃんも変な男にナンパされないから安心して楽しめるでしょ?」

たたみかけるように女性として見てるアピールもさりげなくして来るところもさすがすぎる…と、冷静に分析している自分に内心突っ込みを入れた。

こじらせすぎ。

「たしかに、一人でクラブに行くとナンパ待ちかと思われてめんどくさい時もあるんだよね。
大抵純粋に音楽を楽しみに来てるのが伝わると、そういう男の人って引いてくけど」

自分の思考回路に悲しくなりつつも、悟られないように間を開けず返事をする。

少し自分のことをネタにした発言に彼が笑った。

「そんな露骨なんだ。
そこまで趣味に対してエネルギー使える子、素敵だと思うけどな」

「ありがとう。あんまり理解はされないけど、そう言ってもらえると救われる」

「俺でもやったことないもん、一人クラバー」

「あれ、さりげなくいじられてない?」

「ないない」

間合いの心地よい会話に思わず笑った。
不必要に分析したり、不安になると疑ったり、そういう癖は抜けないけど、楽しいと思う時は純粋に笑えるくらいには相手に心を開けていることに気づく。

< 61 / 163 >

この作品をシェア

pagetop