part-time lover
「何を飲もうか。メニューがないお店だからマスターに聞けば色々教えてくれるよ」
こういうオーセンティックなバーはごくたまに人に連れてこられるくらいで慣れてないから少し緊張してしまう。
知ったかぶりをするより、ここは大人しく相談してみよう。
「フルーツを使ったカクテルをお願いしたいんですが…」
「今日のフルーツは文旦、桃、オレンジ、キウイをご用意しています」
「夏らしくていいですね。そしたら桃のカクテルをいただきたいです」
「国産のジンを使ったマティーニがおすすめですが」
「おいしそう!そちらをお願いします」
二軒目にこういうところに来ると、どうしてもデザートがわりにフルーツカクテルが飲みたくなってしまう。
彼はアイラウイスキーをロックで頼んだ。
ウイスキーは全く詳しくないけど、氷をカラカラ言わせてウイスキーを飲む男の人はわりと好きだったりする。
バーテンダーがキレ良くシェイカーを振り、ショートグラスに綺麗な白い液体が注がれた。
ガラスの淵に添えられたミントの緑とのコントラストが暗がりに映えて少し眩しい。
彼の重厚なグラスに目をやると、大きな氷が深い琥珀色のウイスキーから顔を出している。
お互いグラスを手に持ちぶつけた。
先ほどの賑やかな店内から一気に落ち着いた雰囲気になり、思わず背筋が伸びる。