part-time lover
純粋に今のいろいろな可能性を秘めてる彼との関係性を楽しく感じつつも、彼の無邪気な笑顔を見ると自分の汚い部分を思い出して少し心苦しくなる時がある。
今後付き合いが長くなることがあるなら、少しずつ薄れていくのだろうか。
「あれ、何か変なこと言ったかな?」
「え?」
「いや、ちょっとだけ笑顔が不安そうだったから」
指摘されてはっとした。そんなに顔に出やすいタイプじゃないと思ってたんだけどな。
「ううん、そんなことないよ。明日何着てこうかなって考えてただけ」
「何それ。透子ちゃんのお気に入りで来てくれたら何でもいいよ」
「逆に難しいやつだよそれ。電車で考えながら帰ろうかな」
うまくごまかせたのだろうか。
とにかく見た目だけでも潔白な女性に見てもらえるようなコーディネートを考えながら今日は帰ろう。
「そうそう、時間大丈夫?」
話の句切れ目でちょうどよくグラスはお互い空になっていた。
腕時計に目をやると23時すぎ。解散にはちょうどいい時間だった。
「ちょうど飲み終わったところだしそろそろかな」
「わかった。今日も遅くまでありがとう」
二軒目ルールで今度は私がお会計をした。
「ありがとうございました。階段お気をつけて」
マスターの渋い声に見送られながら言われた通りゆっくり階段をくだった。
来た時に比べたらだいぶ足取りは落ち着いている。
「いいお店教えてくれてありがとう」
「いえいえ、気に入ってもらえてよかった」
人通りの少ない道を、駅に向かって再び歩き出した。
歩きながら自然と指を絡めてくるあたり、完全に彼のペースにもっていかれてるけど、それがむしろ心地よかった。