part-time lover
待ち合わせ時間の5分前、元町中華街の駅に降り立つ。
土曜日だけど天気のせいもあり、以前来た時より人が少ない気がする。
少し緊張しながら中華街方面の改札を抜けると、人混みの中に彼の姿を見つけた。
こちらの視線に気づいたのか、彼がニコッと笑って手を振ってくれた。
白いサマーニットにタイトなジーンズ。
雨の憂鬱さと対照的な爽やかスタイルだ。
私も軽く手を振って彼の方に近づく。
昨日の今日なのでなんだか気恥ずかしくて、思わずはにかんでしまった。
「ごめんお待たせしちゃったかな?」
「いや、さっき着いたばっかり!
いつも透子ちゃんに待ってもらってるから今日は早めに行こうと思って」
そんなことまで気にしてくれてたのか。
本人にとっては大したことじゃないのかもしれないけど、ちょっとした気遣いが嬉しかった。
「横浜仕様のお嬢様スタイルで可愛いね」
そしてすかさず今日も見た目について褒めてくれる。昨日の会話を踏まえて言ってくれたとしたら少し恥ずかしい。
「ありがとう。
何着ようか迷ってたら若干寝不足だよー」
「そんなにあれこれ考えてたの?可愛い」
「恥ずかしいからあんまりいじらないで」
私の反応を見て笑うと、「それじゃ行こうか」と彼が手を取り歩き始めた。
相変わらずエスコートが上手だなぁ。
いつもの客観視の癖に悲しくなりつつも、ときめいている事実は素直に受け入れられるようになったみたいだ。