稲荷と神の縁結び
１
今日もまたバトルが始まる。


「よろしくお願いします」

時刻は日も沈みそうな夕方、私は会議室でホワイトボードの前に立っている。
目の前には何十人もの人が座っていて、当然ながら私に視線が集まる。

ペコリとお辞儀をして、顔を上げた先にあるのは--うちの社長の顔。
社長………いや、 もはや君主様と言うべきだろうか。

永江 清貴（ながえ きよたか）
三十二歳という若さで社長に君臨するうちの絶対君主様。
そう言われるのは、どこに居ても目につく端正な容姿。それこそモデルと言われても納得する、くっきりとした二重瞼に、その奥にある涼しげな澄んだ瞳。それにやや薄いしなやかな唇が、まさに『爽やか』の象徴であり……それに加えて長い手足を操る仕草は、どこか優雅さを醸し出している。

まぁつまり…爽やかで気品のある佇まいが、まさに『絶対君主様』の名にぴったりなのである。


もちろん、そう言われるのはこの容姿だから………だけなはずはない。


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