稲荷と神の縁結び
「三月になったら春・夏物を買いに行きますわよ」ってまだ買うのか !と私は少し引いてしまった。
申し訳ないので断ろうとしても、滋子様の有無を言わさぬ雰囲気に口を挟むことができない。どうしても断ることはできなさそうだ……。



「あなた、そこそこお給料いただいているんでしょう?昔のインセンティブは特に凄かったと聞いておりますが?」

「…えっと、ほとんどを家に入れているので……あまりお金は……」

「ちょっと清貴!」

「はいっ?!」

「ちゃんとこはるさんに色々買ってあげなさいよ。あなた、ほっっんとうにダメね。男として」

「いえ、清貴さんには散々…良いお肉やらお菓子などをいただたいておりますので…」

「でもね、ちゃんと女性として綺麗に着飾らせてあげるものも男ってものでしょう?!」

「それは……あの……普通は恋人やら旦那様が奥様に対して行うことでは……」

「だったらあなた、清貴と結婚すればいいじゃない」

「それは、さすがに………」
(何なんだこの親子は………)


三人で野菜たっぷりの鍋をつつきながら、なぜか私達は滋子様のお説教を聞くことになってしまった…。
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