稲荷と神の縁結び
「では、清貴さん。行ってきますね」

私はリビングにいる清貴さんに声をかける。
ソファーでみかんを食べながら紅白を見ているという気の抜けた姿に、何となく安心感を覚えるようになってきた。


「帰りは四日?」

「はい、四日の夕方頃帰ってきますね」

私は今から、神社の手伝いに帰る。
正月はみんなうちの一族が集まって、シフトを組んで神社の当番をする。特に私やちかなど(一族の中でも)若い者は、夜中の当番に当てられているのだ。

清貴さんは立ち上がると‐私の前に立ち、ふわっと頭に手を置いた。

「頑張ってこいよ」


やっぱり…口角を上げた顔は、馨様に似ている気がしている。
心臓がドキッと波打つように跳ね上がる。だけど…何故か不思議と心地が良い。

清貴さんと暮らし始めて、こんなに長い時間離れるのは初めてだ。少し寂しさがあるし、しんどい正月の仕事だけど…この笑顔で乗り切れそうな、そんな気がしている。


「はい。では行ってきますね!」

そして私は、神社に向けて出発した。
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