稲荷と神の縁結び
「永江さんだっけ?圭吾のお友達の……」

「便宜上はそうなってるみたい、ですけどね……」

私は遠い目をしながら、観念して緋色の袴を着付ける。

「社長の奥さんになるなら……うちは大歓迎ですけどね」

「売上が右肩下がりでも?」

「……それは困ります」

ビシャッと言う辺り、やはり肩書きの奥にあるお金が目当てらしい。
まぁ何とか最近は下がらず、平行線は保てていたから……って何を考えているのだ。最近滋子様が『もしあなたが清貴と結婚したら…』と焚き付けてきているので洗脳されているのかも知れない。


私は準備を終わらせると、境内の社務所へと向かう。
もう既に夜中組が揃ってて、奥で夜食をつまんでいるらしい。一ヶ所にみんな集まっている。

「久しぶり、こはちゃん」

そう声をかけたのは、洋祐(ようすけ)こと洋ちゃん。
分家…元を正せばハトコにあたる、ちかより一つ上の大学生だ。小さい頃からちょくちょく手伝いに来てくれている、うちの分家の良心。
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