稲荷と神の縁結び
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甘酒の鍋もすっからかんになり、一通り新年の挨拶を済ませた午前一時。
大分人の波が人が引いてきて、境内の人影はまばら。真っ暗な中で、焚き火の炎だけが揺らめいている。
「薪無いけど持ってくる?」
せっせと薪をくべている洋ちゃんが聞いてきた。
まぁそろそろ人手も少なくなるし、今のうちに補充をしておく方がいいだろう。
「じゃぁお願い。ついでにうちのお父さんの様子見てきて」
「はーい、了解!」
そろそろ年寄り組は、朝の当番に向けて寝ないといけない時間だ。何せ朝から夕方までノンストップでの御祈祷が待っているのだ。そろそろ寝てもらわないと体が持たないだろう。
さっきちらっとお父さんの姿をみたが……話の長い氏子の方々に捕まっていたので、抜け出せたかどうか心配だ。一応うちのお父さんは、人望だけは人一倍ある。クソ親父呼ばわりされているが、これはものすごく父親として尊敬しているところである。
「さっきさ、お父さん……商工会の会長に捕まってたよ……」
隣でちかがぼそっと呟く。
あぁ、あの同じ話を延々と繰り広げる。話が一番長い……。