稲荷と神の縁結び
「ちょっとそろそろ寝てもらわないとねぇ…」

「うん確かに。もう年寄りなんだから」

まだ年寄りと言うには早い気はするが……バッサリ言うちかは、圭ちゃん以上に遠慮がない。


「もうそろそろ圭ちゃんも ………ってこはちゃん………」

いきなり小声になり、何だ?と思ったが……ちかの視線の先に居る人物を見てピンときた。


あの新嘗祭でちかに絡みまくったという、釜谷さん家の長男ではないか。
随分とはげ……いや、髪の毛が少な…ってこれは失礼だなとその思いはぐっと押し込める。

その長男は、私達に気が付くとこっちに向かってくる。
若干よろけているのは、恐らくお酒が入ってるからだろう。私はちかに『あっち行って』のごとく会館の方向を指差しすると、頷きそっちに向かって行く。
私はちかを見送ると、振り向き彼に軽く会釈をした。


「あっれぇ~?こはるちゃーん酒は!?酒!!」

その長男がぐいぐい詰めよってきた。
予想通り、息が随分と酒臭い。

「今夜分はもうおしまいですよ。朝また来てください」

「今出せって言ってんだろ!今!!」

「だから、また朝に来てくださいね」

にっこりと営業スマイルで対応するが、更に詰めよられたかと思うと、腕をがっしりと捕まれ強引に揺さぶられる。男性なので力が強く振り払えない。
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