稲荷と神の縁結び
すると、誰かがポンっと頭に手を置く。
とっさに「きよ………」と清貴さんの名前が出そうになるが、それは当たり前に違った。顔を上げると、あの釜谷のおじさんの次男の方だ。私は頭の中で、必死に名前を思い出す。

「えっと………和茂(かずしげ)さん……」

「ごめんねこはるちゃん。うちの兄が」

言い直さないあたり、正解だったらしい。
確か私より一回り年上だったはずだが…長男と比べると、髪はともかく随分と若く見える。
何というか、記憶のある二十年前‐つまり学生時代から…全く外見が変わっていないように思う。せいぜい白髪が増えたぐらいだろうか。


「最近、酒に酔って暴れるようになってきてね。外じゃマシだと思ったんだけど」

「それは……苦労しますね………」

「ごめん、回収して帰るよ」

そして頭を下げたかと思うと‐私の耳元に手を置いて耳打ちする。


『キレイになったね』


はい?!と顔が火照り動悸が激しくなる。
まじまじとその和茂さんを見ると、クスリと笑いながら颯爽と去って行った。

あんなこと言う人だったっけな……。いや、そもそもあんまり喋ったことすら記憶に無いような。
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