稲荷と神の縁結び
「ただいま戻りました……」

玄関の引戸を開けても‐全くもって返事がしない。
大丈夫だろうか…そう思いながら玄関を上がり、いつものリビングに向かう。その最中にも雨足は強くなり‐ザーザーという音が聞こえてきている。


「清た…………げっ?!」

リビングの扉を開けると……目を疑う光景。
たった三日で荒れ放題になった部屋。

服は脱ぎっぱなし…テーブルの上には食べかけの重箱やグラスが放置……。これじゃあの頃に逆戻りだ。
たった三日放置しただけでこの有り様かと、思わずため息が漏れる。

その部屋を汚した張本人は、ソファーでブランケットにくるまって寝ている。
恐らくだが、ワインのボトルが沢山転がっているので…相当飲んでいたんだろう。

どうしたもんか…そう思いながら清貴さんの顔を覗き込むと‐うっすらと引っ掻き傷があるのがわかった。あの正月の時の傷だろう。

数日間も残っているってことは…そこそこ深かったのではないだろうか。
私は確かめようと、その傷に向かって手を伸ばした。
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