稲荷と神の縁結び
「起きた、ってかお腹空いたって起こされた」

「ごめんね。朝食作ってる暇無かったの」

その起こした甥っ子は夕湖ちゃんによじ登り、だっこをせがんでいる。夕湖ちゃんもそれに答えるように、湯呑みを流しに置いて自然に抱き上げてた。

「ひょっとして、二人とも食べてないの?」

「うん」

「じゃあ二人のも用意するよ」


私は即座に、追加の卵を割って混ぜた。そして少し大き目の玉子焼きができる頃には…甥っ子は夕湖ちゃんに掴まって夢の中の住人になっていた。
起こしておいてそれか!と突っ込みたくなったが、まぁ昨日から気を張っていたんだしお母さんに甘えたいんだろう。


私は圭ちゃんと私の分だけ盛り付けて、居間に向かった。
居間では圭ちゃんが資料と睨めっこしている。


「圭ちゃん、朝食」

私が圭ちゃんの前にお椀を置くと「ありがと」と微笑むが…一瞬で真顔に戻る。
そして無表情のまま、資料を畳の上に置くと手を合わせてごはんを食べ始めた。
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