稲荷と神の縁結び

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「やー今日も凄かったわぁ………」

時刻は夕方六時を回っている。
私がオフィスの片隅でぐったりしている中、そう隣で笑っているのは…私の上司にあたる有沢貴美枝(ありさわ きみえ)さん。私よりも随分年上の女性だ。


「社長にあんな言えるのこはるちゃんだけだねぇ」

「……したくてしてる訳じゃないんですが」

「まぁ元販売員ナンバーワンなんだもの。それぐらいでクビにはならないでしょうしね」

「そうですよ!元々社長に教えたのは私ですから!
あの頃は、良かった………」

そう遠い目をしている私を見て、更に有沢さんは吹き出して笑っている。



そう四年前のあの頃、私は店舗で売上トップをひた走る販売員だった。


うちの会社『株式会社かおるや』は主に貸衣装‐メインは成人式の振袖のレンタル事業 をしている会社だ。
元々は『株式会社彩馨(さいけい)』という高級呉服販売を手掛ける会社から独立した会社。
更に詳しく言うならば、彩馨の創立者は永江 馨(かおる)と言い、その息子がかおるや創立者の永江 清(きよし)

まぁお分かりだと思うが、その息子が永江 清貴こと君主様であり、君主様はまぁ正当な後継者で産まれながらにして君主様だったのである。
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