稲荷と神の縁結び
君主様がここの社長に就任したのは四年前。
彩馨創立者であり社長であった馨様が病に伏せられてしまった。
それに伴い、スライドするかのように当時の社長、清様が彩馨の社長になり、別の会社で腕を磨いておられた清貴君主様が呼び戻されて、かおるやの社長に就任したのである。

その時の店舗研修のパートナーが、入社二年目にして契約数・売上トップに君臨していた私だった。


当時の私は、飛ぶ鳥を落とす勢いで売上げを伸ばしており、ベテラン勢を差し置いて売上一位を記録。かと言えば、やっかみが激しそうなベテランのうるさいおばさま方ともうまくやっている、どこか異色の存在として各方面から認識されていた。

当時の君主様は、まぁ物腰が柔らかく育ちの良い『品の良さ』に溢れた笑顔が似合う好青年で……。
社長の息子を鼻にかけない気さくな態度で、社長への就任が発表された時には『この人が社長だなんてなんて幸せな!』と思った程だ。


それがだ。今ではこうなのだ。

かつて笑顔で仕事を教えていた私は、今は会議室で毎回バトルを繰り広げている。

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