稲荷と神の縁結び
すると清貴さんは顔を歪めて‐その弁当箱をカゴに放り込む。
「何?明日だけ?」
…それは毎日作れってことでいいのだろうか。
「せっかく、これから旨い米が食えるんだから」
まぁ、確かにそうだけれど。
ということは…
「日の丸弁当?」
「馬鹿かお前」
ゴツンと軽く頭を叩かれて‐その叩いた場所を、わしゃわしゃと撫でられる。
手が頭を包み込んで…予想よりも大分大きな掌。
「グリンピースは嫌いだから、グリンピースの玉子焼きだけはやめてくれ」
「……嫌いだったんですね」
「あんまり言いたくなかったけどな」
見上げる清貴さんは、取り繕ったような苦々しい笑顔。
どうやら嫌いなのは本当らしい。
「あと嫌いなもの、何かありますか?」
「いや、特にない。何作ってくれんの?」
「そうですねぇ…シンプルな玉子焼きに、野菜は…って食材が全く無いんで買ってっていいですか?」
「いいけどメシ行くから常温のやつな」
「………じゃぁグリンピースは無理ですね」
わざとそう言うと、再び頭にゴツンという衝撃。