稲荷と神の縁結び
叩かれた…ではなく、頭突き。
おでこに額を押し付けられて、グリグリと迫ってくる。

顔が、近い……!

「ちょっ………!」

アワアワする私を、満足そうに見下ろしては
「ほら、あしらえない」
そう満足そうに呟いて、パッと額は離される。


そして『何でもない』といった感じで、さっさと歩いていく。

「あと十五分で決めてくれ」と飄々としている。


正直……やられっぱなしで、なんだか悔しい。
さっきから心拍数が一向に下がらない。
何とか平静を装うために、頬を自分でベチッと叩いた。


「こはる?どうした?」

くるりと振り返った清貴さんは、さっきの感じと違い、フワッと軽く口角を上げた。
一気に空気中が緩む。


「………なんでも、ないです」

なぜだかその顔に‐さっき以上に心拍数が上がる。
私はそれを必死に押さえながら、「行きましょう」と清貴さんを青果コーナーまで引っ張って行った。
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