稲荷と神の縁結び
私が店舗業務を離れて、本部に移動してきたのは二年前。

ちょうどうちの会社で『前撮りプラン』というものを始めた。
成人式の振袖レンタルが決まった後に前撮り撮影するプラン。
店舗の一角にスタジオを作り、そこでプロのカメラマンが撮影を行う。基本的な立ち姿・座り姿のポーズの他に、様々なシチュエーションの写真を撮影し、気に入った写真を購入してもらうスタイルの販売方法。

これがかなりの好評で、私はお客様と写真をセレクトし、アルバム作成を提案するプランナー職になった。
ここでも幸い、私は高い売上を出すことができ、本部の『フォト事業部』へ移動になったのだ。
今はお客様に新しい商品‐新しいプランやアルバムなどの商品 を企画する営業企画に在籍している。

ここに移動してからというものの、私は毎回のように君主様とバトルを繰り広げている。
あの楽しかった日々は幻だと言わんばかりに。


「まぁ、社長が当たりたい気持ちはわかる」と有沢さんは溢す。

「何でこんな売上が下がるかなー……頭痛いね」

「………何ででしょうね」

半年ほど前に元彩馨社長の馨様が亡くなられてからというもの、なぜか売上は右肩下がりの一方。
それはもう皆が頭を抱えるほどで………。


「それに、まぁうちは伸び代まだありそうだし」

そういうことで、更に売上を伸ばせそうな事業だから熱が入っているのだ。


「………少しは遠慮してもらいたいものですね」

あの笑顔を見せてくれたらやる気になるのに、なんて。
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