稲荷と神の縁結び
当時は甥っ子の偏食がひどくて、いつも野菜を残してくることに頭を悩ませていた。
なので玉子焼きやハンバーグなどに野菜を混ぜて、どうにか食べてもらう工夫をしていたのだ。

「そりゃ大変だな」

「でもこの玉子焼きはすっごい食べてくれるんですよ。美味しいって」

「……本当に?」

「清貴さんいります?一個あげまし…」

「いや、いらないわ」

あまりにバッサリと斬るような口調で言うので…

(そりゃお坊っちゃまだし、人の手作りは食べないよな……)

そう自分の中で納得させていた。


清貴さんは弁当を広げ、食べ始めると
「食いながらだけど、こはるにお話です」と。

「なんでしょうか?」

「来期から店舗で新しい取り組みを始めようと思ってるんだが、こはるも参加する気はないか?」

「何をするんですか?」

「実はな、お祖父様の知り合いで写真館を運営してる人が居たんだが、急に亡くなられてしまってな。元々売り上げが下がっていたことだし、娘さんが買収して欲しいと持ちかけてきたんだ。うちで買収しようと思う」
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