稲荷と神の縁結び
私はご飯を茶碗によそうと、コンロに火をかけて鍋が暖まるのを待つ。
グルグルおたまで鍋をかき混ぜていると‐後ろに気配が…。

「……?どうされました?」

清貴さんが味噌汁の鍋を覗き込んでいる。

「こんな作ったの?朝から……」

「……?あ、多かったですか?」

本日の朝食のおかずは『茄子としし唐の煮浸し』『かぼちゃとツナのサラダ(かぼちゃは弁当の残り)』『ワカメと麩の味噌汁』
我が家的には平均的な朝食なのだが…。

「多かったら残してくださいね。夕食でお出ししますんで」

「こんなに作るの大変じゃね?」

「……?うちはこれが平均ですよ。むしろ二人だから随分楽です」


味噌汁が沸騰直前になったので、お椀によそって「食べましょう」と清貴さんに促す。
そして二人で席について『いただきます』と朝食を食べ始めた。

「お味はいかがでしょうか?」
黙々と食べているので…まずいという訳ではなさそうだが……。


「あぁ旨いよ。ありがとう」

……今、何て言った?
ありがとうって言った?!

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