稲荷と神の縁結び

「こはるちゃん。終わったから帰るわね」

時刻は午後一時半。昼休みが終わってまだ三十分しか経たないが、有沢さんが帰る支度を始めている。
どうやら今日の業務が終わったらしい。


「はい、お疲れ様です。明日はどうしますか?」

「今日の売上と併せて考えよっか。まだ若干仙台があやしいからね」

「わかりました。」

「じゃ、社長にレポート出したら帰るね。………それ、サンカラーの資料?」

私が見ていたのは、アルバム制作会社の資料だ。
この前営業の人が置いていったもの。

「えぇ。新しいアルバムの話で、今から会いに行こうかと思ってるんです」

今日メールしてみたところ、いきなりアポが取れたので、もう少しすると出る予定だ。

「他の会社のこととかも聞いてきますね」

「そっか。よろしく伝えといてね」


そうして有沢さんが帰ってしばらくした頃、私も会社を出ることにした。
「外出してきます」と声をかけて、従業員用の裏口に向かうと………そこに居たのは………


「し、社長……、お疲れ様です」

そう、裏口の前には清貴さんが立っていた。
不意打ちすぎて挙動不審になってしまう。
< 65 / 233 >

この作品をシェア

pagetop