稲荷と神の縁結び
やっぱり彼は…清貴さんは、うちの絶対君主の名に相応しい人なのだと。

ベテランの森岡さんにも物怖じせずに、堂々と雄弁に指示を出す姿からは、年齢以上の落ち着きと風格を感じる。
それは到底、経験と言う言葉だけでは説明がつかない。元々の素質がないとつとまらないものだろう。


明らかに、私達の間には‐壁がある。
上に立つ人間と、下で働く人という壁があるのだ。それはきっとエベレストのように高い。



「時松さん、九州の売上随分と上がりましたね」
私を退屈させないようにか、森岡さんが話を振ってくれる。

「はい、何だか一安心です……」

「このまま盛り返して欲しいところですね。ね、社長」

「そうだな」

「私もフォト事業には期待しているんですよ。時松さんが彩馨のバイヤーじゃなくてフォト事業を選んだ時は驚いたんですが…思った以上に売上が伸びてくれたので、清様は悔しがっておられるみたいで」


………あれ?
バイヤーって何の話なんだろう?

全く見に覚えのない話で、頭の中を疑問符がぐるぐる回っている。
彩馨側からは一度もそんな話を聞いたことがないのだが……。

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